「人質の経済学」を読んだ

「人質の経済学」を読んだ
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ロレッタ・ナポリオーニ著の「人質の経済学」を読んだのでざっくり書評をまとめたいと思います。 エンジニアだからと、オライリー本 ばかり読んでいてはいけないですね。

購入の経緯

「人質」が「経済」に結びつきそうなのは、世界中のどの地域でしょうか。

おそらく大半の人が思い浮かべるのは、中東、とりわけイスラム教圏の国々なのではないでしょうか。

最近は日本のメディアでの報道が減りましたが、一時はイスラム過激派が中心となった武力闘争をはじめ、 日本人の人質騒動もあったことで、 「イスラム圏 = 危ない国」というイメージを持ち 、 人命が日常的に危険に晒される地帯においては、言われてみれば確かに、人質ビジネスが成立しそうです。

たまたま、amazon をネットサーフィンしていたらこの本を見つけ、 戦火とは程遠い国に住んでいる人間が国際社会の予備知識を蓄える目的も込めて購入しました。

人質ビジネス時代の変遷

本書の特徴は一つは 人質ビジネスの変遷 を抑えている点です。

そもそも、世間一般の「ビジネス」にはトレンドがあります。お金の流通するプラットフォームに流行り廃りがあるのと同様に、人質ビジネスも一過性のブームに過ぎない のです。 本書では、「人質」が『商材』として機能していた一時代だけではなく、その前後の時代の『お金を産む種』にも十分に触れられているため、論展開に一貫性があります。

いかに、地域経済が世界情勢の波に翻弄されながらも、合理的な方向へ変化を遂げていくか を垣間見ることが出来ます。

人質解放交渉のリアル

もう一つの特徴は、実際の人質解放交渉の事例 が多く取り上げていることです。

人命が商材になる一連の時代には、多くの被害者がいるわけで、各時代の章で様々な被害者の事例が紹介されてきます。 もちろん、命が助かった事例、残念ながら命を奪われた事例の両方が扱われます。 被害者の命運を分けたのは何か 、とりわけ、一度に複数人が誘拐されたケースでは なぜこの人は助かったのに、この人は助からなかったのか が筆者の考察や関係者の取材によって明らかになります。

また、人質解放交渉にあたって、交渉人、政府、実行犯、教唆犯等の 関心事が異なる人間同士の思惑と、複雑な駆け引き には、道徳的観点がスッポリ抜け落ちるリアルさ を感じざるを得ませんでした。

なお、事例ベースの展開が本書の大半を占めるため、事例嫌いの読者の方にはあまり向かないかもしれません。

著者のロレッタ・ナポリオーニさんについて

過去には TED Talk での登壇経験もあるようです。

本書を執筆するにあたり、多くの交渉人や被害者等への取材をしています。

交渉人は業務上人命を取り扱うことから、部外者に迂闊にセンシティブな情報を流すことはご法度なはずです。

それにも関わらず、筆者にこれだけの協力をするのは、筆者への一定の信頼関係があり、 交渉人とのコネクションを構築できている筆者だからこそ表現できた内容も含まれています。

一方で、 「イスラム過激派の変遷のルーツ」と「欧米の法律」の関連性 に対する筆者の見解には 「筆者のバイアスが入っているのではないかな?」と感じる部分もありました。

もちろん、単純に彼女の方がプロで、私が素人だからかもしれません。

最後に

昨今は海外旅行への敷居も下がり、リッチシニアがリタイア後に僻地へ海外旅行三昧のようなケースもよくありますが、 訪問国への治安も含めた下調べは必要だと感じました。

加えて、くれぐれも自分の幼い好奇心や正義感で国際社会に迷惑をかけるべきではないことを思い知らせてくれるオススメの良い一冊です。

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